東京モンブラン

ざっくり飲食備忘録です。

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エーグルドゥース/目白

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AIGRE DOUCE

目白駅から徒歩10分ほどにある東京代表パティスリー。

シェフは寺井則彦さん。専門学校を卒業後に『ルノートル』入社、その後渡仏、ベルギー、アルザス、パリ、各地で研鑽を積み、帰国すると『マダム・ミクニ』でシェフ・パティシエに就任。2003年の『第8回クープ・ド・モンド・ラ・パティスリー』で総合第2位。

翌年に当店をオープン。関連書籍も多数出版する、パティシエが尊敬するパティシエが営む当店。期待大でうかがいます。



店内は撮影禁止。扉を開くと、内装の煌びやかさ圧倒されます。道路沿いに面したお店ですが、中に入るとそこはもう別世界で、フランスのパティスリーってこんな感じの雰囲気なのかなとどきどきしてきます。

ショーケースの中のケーキはどれも個性的なのはもちろん、焼き菓子やマカロンも堂々とディスプレイされてその存在感を示しています。ゴージャスながらもどこかファンシーさも感じられ、僕としてはアステリスクアテスウェイのようなシンプルでブティックのような雰囲気よりも親しみが持てる。ほんとうに子どもが喜びそうな、そんな内装。


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さて、買ってきました!!

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外装もそうでしたが、当店はところどころに紫を使っています。袋のデザインもクラシックで、どこか色っぽい。

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【シャンティーフレーズ】

当店のスペシャリテ。ショートケーキです。

スポンジに挟まれたクリームはスポンジの厚さよりも高いくらい。その理由は中に忍ばされたいちごがしっかりとしたサイズ感だからです。ごつい、と言ってもいいくらい。

幼いころ、ショートケーキのいちごがちいさくて悲しい思いをしたこと、ありませんか? 当店のいちごはそんなことなし。子どものころの僕がこれを食べていたら、あんな悲しい気持ちにはならなかったのでは。スポンジにはいちごのシロップがしっかりと打たれて、いちごの風味にさらに拍車をかける。

しかしそれだけじゃない。このケーキの本領はスポンジのスペックの高さにあります。口に含むと、とたんにすっと消えてしまう。どうやったらこんな口溶けを実現できるのか。まさかショートケーキでこんなに感動するとは思わなかった。ショートケーキにはまりそう。

ところで余談ですが、ここ数年でコンビニのクリスマスケーキとかもやたら『ガトーフレーズ』とか言って宣伝してませんか?ガトーフレーズってなんやねん、しゃれづきやがって。エーグルドゥースくらいうまくなってから言ってほしい。別物だかんな。

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【カスレット】

こちらも当店のスペシャリテ。シュー生地にカスタードクリームをきっちり詰め込んで、底にはバナナのキャラメリゼ。表面も丁寧にキャラメリゼされてパキパキ。色味からもうすでにおいしい。

なんでも当店はカスタードクリームにこだわりが強いらしく、カスレットとシュークリームでは使うカスタードを使い分けるらしい。カスレットに使われているカスタードはあっさりめ。バナナのキャラメリゼはこっくりと甘く、酒が効いていてなんと色っぽいことか。全体のバランス感覚がえぐいぜ、、

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【トルシュ・オー・マロン】

『賞味期限1時間』と銘打たれたモンブラン。味もさることながら、その大胆なプレゼンテーションでメディアや雑誌でもしばしば取り上げられる秋冬限定の商品。

なぜこのモンブランの賞味期限は1時間なのか。それは台座にメレンゲを使っていて、クリームの水分でメレンゲの食感が損なわれないようにするためらしいです。なので注文を受けてからクリームを絞ってくれます。メレンゲについては後々。

当店のモンブランはフォークを入れるとマロンストリングがぽろぽろと崩れていく。マロンペーストの割合が多いのでしょうか、栗の香りと風味が抜群に効いています。

しかしマロン部分に甘味はあまりなく、かといってクリームにしっかり甘味がついているというわけでもない。甘さひかえめと表現するにしても、ずいぶん抑制的です。ううん、これはちょっと僕のモンブラン観とはちがう立ち位置のモンブランです。

リリエンベルグみたいにばっちばちに栗感を打ち出しているモンブランが好きなひとにははまるかもしれません。

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【サヴァラン・オー・ロム】

最近はスポイトに酒を入れてそれを生地に挿した状態で販売するスタイルが増えましたね。

まずは酒を追加しないままにひとくち食べますが、現状でも相当に酒が含まれていて、風味なんてあまっちょろいもんじゃない、がっつり効いています。スポイトのラム酒まで加えると、生地がすべてを吸いきれずに、ぼたぼたと垂れ落ちます。まさにつゆだく状態

クリームはマスカルポーネが含まれているみたいですが、もはやよくわからなかったですすいません。食べ終わったころにはちょっとしたほろよい気分です。

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【ムランググルマンディーズ】

前述したモンブランにも使われているメレンゲを主体に作られたケーキ。

絞られたプラリネクリームはふっくらとかわいらしく、中には固めのカスタードクリームとキャラメル?バター?のクリーム。判然としませんでしたが、いちいち手が込んでいます。

カスタードクリームはカスレットのものよりも卵黄の味が強く、プラリネクリームのビターな風味と合わさって上品な仕上がりです。そしてメレンゲですが、このメレンゲがまあすごくて、わしゃわしゃと口でほどけてすっと消えていきます。 



つい熱がこもって長い記事になってしまいました。それだけ当店の腕前はすばらしいものでした。伝統的なところを残しつつ、ほどよくオリジナリティーを感じさせるアレンジがあり、そのどれもが意図した結果に落ち着いているのか、食べていて安心できます。ケーキだけでみたら当店は僕にとってナンバーワンかもしれません。またひとつパティスリー偏差値があがった気がします。


最後にひとつ。シャンティフレーズについて書いた際に、こどものころの僕が当店のショートケーキを食べていたら悲しい思いをしなかったのでは、と書きましたが、結局はこどものころに食べなくてよかったと思いました。

なぜなら、こども時代からこんなうまいショートケーキなんか食べていたら、僕は取り返しのつかないくらいひねくれた、いやみったらしい人間になっていたかもしれないからです。

だって、こんないいものを食べていたら、もしともだちの家に行ったときになにかお菓子を出されてもなんにも感謝できなかったかもしれない。そもそも幼少の僕にとってケーキとは、特別な日にしか食べられないハレの食べ物だったから、よそに行ったときに出されたお菓子がほんとうにうれしかった。

そういう思いも相まって、いま食べるケーキに感動できるんだなと思うと、いまの自分の境遇に感謝せずにはいられないのです。

なんだかじーんとくるものがありました。当店には季節の変わり目ごとに行って、あらゆるものを食べたい。思い出せば思い出すほどにうつくしく思い出されるパティスリーです。

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