フロリレージュ/外苑前
Florilege
2018年版ミシュランガイド東京にて、1つ星から2つ星へと昇格を果たした東京を代表するフレンチレストラン。
シェフは川手寛康さん。『オオハラ・エ・シーアイイー』、『ル・ブルギニオン』を経て渡仏。帰国後は『カンテサンス』にてスーシェフを務め、2009年に独立。2015年,外苑前に店舗を移転させました。
ル・ブルギニオンは僕の大好きなお店であり、その出身である下野シェフの店、『アニュ・ルトゥルヴェ・ヴー』も僕の好きなベクトルのお店。
ずーっと行きたくて行きたくて、でもタイミングもなくて、ぐずぐずしていたとき、ミシュランで2つ星になったと知り、
これはもう予約さえできなくなってしまうかもしれない!!
と、急いで予約。これはたのしみすぎます。
ウェイティングからおしゃれでやられてしまいます。
当店は個室を除くと全席カウンター。
我々が座った席はカウンターのど真ん中で、いちばん見通しがいいだろう席でした。キッチンをテキパキと動き回るキュイジニエとサービスの方々。
みなさんの姿勢がすごくよく、常に見られているという意識がそうさせるのでしょうか。ふつうの店なら、裏に下がれば気のひとつでも抜けますが、ここは終始オープン状態でそうもいかない。プロです。
メニューは紙で渡されますが、この紙も高級そうなしっかりとした質感の紙です。
落ち葉やら枝やらが盛られた皿が、、
【アミューズ 焼き芋】
枝をひっぱるとミニマムな焼き芋が登場!!
皮は紫芋で作られていてもちもちとした食感。中身はさつまいものピューレ。
やさしく舌を馴らしてくれる味わいで、演出の仕方も冬らしさ満載。アミューズはこれくらい遊んでくれると盛り上がりますね!!
カトラリーはレストに置かれますが、その都度取り替えてくれます。ちなみにカトラリーはクチポールです
【酒粕の蒸しパン】
酒粕の香りがし、かといってどぎつくはありません。
もちもちとした食感で、日本ならではのおもしろい試みではありますが、これは好みが分かれそうです。
【鯖 トリュフ】
前菜は鯖から。
構成要素はじゃかいものスライス、トリュフ、湯葉、ブルーチーズのソース。
鯖はミ・キュイ?の状態に仕上がっていて、じゃがいもは食感を残しています。ソースのくせは思ったよりも強くなく、纏われた湯葉との相性もいい。
そして上記を情報をすべて一掃してしまうほどのえげつないトリュフが、じゃがいもスライスとの間にぎっしりと敷き詰められています。ミルフイユ状態です。
なんだか不思議な組み合わせ同士でしたが、前菜からばっちばちに手が込みまくっていて、、
そしてうまい、、
【サスティナビリティー】
こどもを産んで肉質がわるくなった牛は殺処分されてしまうのですが、それをやめ、1年間宮崎牛と同じ環境でえさを与えて育てなおした経産牛を使用した前菜。
川手シェフはフードロス問題にも積極的に取り組まれていて、経産牛もその一環みたいです。
経産牛は軽く乾燥されて生ハムのような質感。そこに出汁を注いでしゃぶしゃぶのようにしていただきます。
説明書をいただきました。
料理人は料理だけ作っていればいいという時代は終わり、また、消費者はただ金を払えばいいという時代も終わったのかもしれません。
終始、考えさせられる一皿でした。
【カンパーニュ】
これは酸味の効いた、いわゆるふつうのカンパーニュ。さきほどの酒粕のパンのあとなので、このふつうさにいくらか安心させられる。
ポワソンがサービスされる前に、メインのヴィヤンドである岩手県産ホロホロ鳥をまるごとローストしたものを見せていただきました。迫力ある。
【甘鯛 ふきのとう】
甘鯛は鱗焼きにされ、じゃきじゃきとした食感がおそろしいほどによろしい。
魚の火入れも絶妙で、火が入っていながらも圧倒的に瑞々しい。
ふきのとうのクリーム、素揚げが苦みのアクセントをあたえていて、これはシンプルながら非常に洗練された一皿になっていました。
文句なしで本日いちばんのお皿です。
【ライ麦の蒸しパン】
おっと、ここでまた蒸しパンの登場。
ライ麦パンってほかのパンとちがって酸味が強いパンですが、ここでは蒸しパンにしているのでより食べやすくなっていました。これは個人的にはとてもおいしかったです。
【分かち合い】
さきほど見せていただいたほろほろ鳥。あのかたまりをみんなで食べましょうというコンセプト。
まるごとローストすることで肉質がジューシーに保たれ、そのくせむね肉、もも肉ともにいたずらに油っぽくなく引き締まった肉感。
八丁味噌、九条味噌で味がつけられたご飯。
これは日本人ならではの発想であり、肉を食べて、米を食べるというそのスタイルそのものに安心しきってしまいます。
【いちご ピスタチオ】
ピスタチオのアイスとフロマージュブランのパウダー。
ピスタチオは風味が鮮烈で、パティスリーでピスタチオ関連のケーキばかり頼む僕としては、これは非常にありがたいデセール!!
なかにはいちごのソースと細かく砕いたタルト生地のようなもの。
ピスタチオは冷たく、いちごのソースはあたたかい。
混ぜ合わせた食べるといちごのタルトを食べているような感覚。
アラジンのりんごの薄焼きタルトもそうですが、パティスリーでは食べられないこうしたアシェットデセールはレストランの醍醐味ですね。
【贈り物 アマゾンカカオ】
キャラメルシートに巻かれたチョコレートはアマゾンカカオを使ったものらしく、キャラメル、チョコレートともに香ばしくなめらかな仕上がり。
そういえば、ほかのお客さんのアマゾンカカオは別バージョンでした。うらやましい、、
連れはハーブティーを。
僕は緑茶を選択。
お茶は同じ茶葉で2回淹れてくれます。
かんかんに熱いお湯ではなくぬるま湯で淹れられ、淡い色をしていてもしっかり抽出されていてやさしい味です。
レストランでコーヒー紅茶はよく出てくるので、こういうときにお茶が選択肢にあると選んでしまいますね。
逆にフロリさんが出すコーヒーも飲んでみたいですけど、、
2回目はじっくりと。
フレンチ食べた後にお茶を飲んでほっとするというのは、なんだか不思議な食体験です。
【プティフール ほおずきのパート・ド・フリュイ】
そして最後の小菓子。
ほおずきは大粒で、酸味が強烈ながらもあまさもあり、これまでの食事をびしっと締めくくってくれました。最後の最後まで抜かりなし。
期待通り、いや、それ以上でした。人生のうちでそう体験できない感動を味わいました。
なんといっても当店は総合力がすごい。料理はもちろん、サービス、雰囲気、三拍子揃っています。
サービスは本格レストランにありがちな慇懃なものではなく、客に寄り添い、それでいてべたべたとしておらず、どこまでもフレンドリーでした。
オープンキッチンなので、料理が好きな人間にはほんとうにたまらない空間で、そんな中で極めてクオリティーが高い料理を食べられる。
ランチで払う価格としては決して安くはないですが、それだけの価値があります。
ただ、料理好きなひとは非常にたのしい場所ではありますが、もっとラグジュアリーな食事がしたいひとにはちょっとちがうかもしれないです。席すべてがつながっていて、キッチンの音もまるまる聴こえてくるので、ひとによっては落ち着けないひともいるのでは。
実際、今回の連れは料理人ということもあり、僕らはろくに会話もせずにキッチンの動向などを窺いながら食事をしていました。要するに好きなひとは会話もそっちのけになってしまうくらいの場所であり、もはや劇場なわけです。
これは使い方が分かれるレストランだなと思いました。ほんとうにおいしいものに向き合いたいひとにはぜひおすすめしたいお店です。
誰にでも安易にすすめられるお店ではありませんし、価格も高いですが、僕のなかでは人生最高のレストランになりました。それくらいすばらしかった。
機会があればまた行きたい。半年後くらいにもう1回!!
そのためにがんばって生きようと決心した新年初のフレンチなのでした。
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