オーボンヴュータン/尾山台
Au Bon Vieux Temps
尾山台駅から徒歩で5分程度の場所にパティスリー。到着して、その店の大きさにびっくり。レザネフォールのあとにうかがい、レザネのハコが小体だったこともあって、そのギャップがすごい。もはや城である。
オーナーシェフは河田勝彦さん。日本パティスリー界の重鎮、日本パティスリー界のラスボス。ドラクエならデスピサロ、ドンキーコングならキャプテンクルール、紅白なら小林幸子。そんな感じのあれである。
16時くらいに到着。店内はあたたかな照明で照らされ、雰囲気は絵本のなかに飛び込んだかのよう。当店はパティスリーだけではなく、デリカテッセン、カフェにもかなりの力をいれており、総合的なフランス食文化を伝えていきたいという熱意にあふれています。パンやコンフィチュールなども充実。
しかし当到着時間がおそすぎました。
プティガトーがほとんど残っていない!!!!!!!!!
モンブランがなあーーーーいぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!
うそやん……
うそやん。
そりゃそうよね、アラジン→レザネフォール→パリセヴェイユの流れで、最後に行ったら、なにも残っているはずがない。僕はオーボン先輩に失礼なことをしてしまった。この時点で再訪は確定した。
でも、手ぶらで帰るわけにもいかないので、残ったケーキを買いました。当店のショーケースはけっこうな大きさを誇り、そのなかに3、4種類しかケーキが残っていないと、それはほんとうにかなしい気持ちになる。このショーケースに万全にケーキが揃っていたら、それは相当な眺めなんでしょうね、わかります。わかります……
買ってきました。
バルケット・セゾン
季節のタルトと書かれていました。生の果物が盛りだくさんで彩りがあざやかです。
タルト生地、そのなかにはダマンドが入り、味わいとしてはベーシックというか、王道ですね。果物の下にはカスタードが敷かれ、果物の接着の役割も果たしています。
果物はあたりまえにおいしいのですが、なかでもイチジクが美味。イチジクってなんだかんだおいしいですよね。スーパーで売ってても絶対に買わないんだけどさ。これからも買う気はないんだけどさ。そういう味覚ですよねイチジクって。それがイチジク。
リリエンベルグの保冷剤や、モンブランのナフキンもそうですが、僕ってこういう手の込み方けっこう好きです。ケーキの味とか本質とは正直関係がないけど、その店のケーキを食べているっていう気分が高まるというか。
ゼフィール
超茶色なんですが、チーズケーキです。マスカルポーネを使っているらしく、しっとりと濃厚。上にのっているものはチョコレートなのですが、カテゴリーとしてはクリームよりテリーヌですね。こちらもめちゃんこ濃厚ですが、なにより酒が強い。ブランデーですかね、手加減なしにきっちりと効いています。台座はサブレ生地、甘さひかえめでさくさく。塩分が効いているので、くっと全体を引き締めます。
ルーロールーレ
ロールケーキです。それにしてもなんだろう、このいちごの配置。奇抜……って言や聞こえはいいですが、正直ちょっとダs……
ひとくち食べて慄きました。アーモンドの要素のあるケーキとは書いてありましたが、味わいが完全に杏仁のそれなのです。たしかに、アーモンドは杏仁の香りも持っているのですが、これはもはやアーモンドを乗り越えて杏仁、トンカ豆のニュアンスであり、杏仁豆腐がきらいなひとにはちょっと食べられないくらい。僕は杏仁の味や香りが好きなのでたのしむことができました。おもしろい味覚。
しかしながらこのケーキ、おそろしいほどにちいさい。今年食べたケーキでいちばんちいさいケーキ。半分に切ってふたくちで食べ終えてしまえるサイズ感。
600円である。
たっけえええ!!!!
考えながらちまちま食べていたら、もうなくなっていたよ。食後感もあっさりとしているので、残ったのはこのケーキくそ高い、という印象ばかりである。
おいしかったです。しかしまったく満足がいかない。やっぱりケーキは品揃えがあるなかから、自分が食べたいもの、好きなものを選びたい。今回うかがった時間が遅かった自分たちの完全なる敗北です。その敗北感を食べているあいだ、ずっとひきずってしまいました。モンブラン買えなかったしさ……
なので今回は意見を差し控え! かならず再訪して、あらためて記事を書きたいと思います。しかしながら、今回買ったケーキは正直ふだん選ぶベクトルのケーキではなかったので、そういう意味では新しい食体験ができた気がします。ごちそうさまでした。